「賃貸でも自分らしい空間にしたい」
そんな気持ちから、DIYに興味をもつ方は多いのではないでしょうか。最近は「貼ってはがせる壁紙」など便利なアイテムも増え、チャレンジしやすい環境が整ってきました。
一方で、「原状回復でトラブルにならないかな?」と不安を感じ、なかなか一歩踏み出せない場合もあるようです。
この記事では、国土交通省ガイドラインにもとづく「原状回復の考え方」や、賃貸で注意したい壁紙特有のリスクを紹介しながら、安心して取り組むためのポイントをわかりやすく解説します。
賃貸生活でも 「好きな空間づくり」を楽しみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
和室リフォーム本舗の太田です。建具業界に15年以上携わり、現在はWEBやブログを担当しています。紙好きで襖紙の知識には自信あり。 当社は創業昭和21年(1946年)。自社工場からメーカー直販で、全国へ建具をお届けしています。
賃貸で壁紙DIYはOK?まず知っておきたい原状回復の基本

賃貸で壁紙をDIYする前に、必ず押さえておきたいのが「原状回復義務」です。
これは退去時に、入居者の故意・過失・手入れ不足など、通常の使い方を超える損耗については入居者が元に戻すという法的な決まりです。
まずは、壁に関して「どこまでが入居者負担になるのか」をざっくり把握しておきましょう。
| オーナー負担(賃貸人) | 入居者負担(賃借人) |
| ・日焼け・経年によるクロスの変色・家電の「電気ヤケ」黒ずみ・ポスター跡など軽度の貼り跡・画鋲・ピンの小穴(下地補修が不要)・エアコン設置時のビス穴 | ・清掃を怠った場合の油汚れ・カビ・シミ・タバコのヤニ・臭い・重量物を掛けて作ったネジ穴・ビス穴(下地補修が必要)・入居者が付けた照明器具の跡・落書き等の故意による毀損 |
自然に起こる汚れや劣化はオーナー負担、DIYでついた汚れや破損は入居者負担。この線引きを理解しておくと、DIYで失敗しにくくなります。
参考:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン※外部ページに遷移します。
原状回復とは?国交省ガイドラインで示される考え方
原状回復とは、入居者が自らの過失などによってつけた傷や汚れを元に戻すことを指します。国交省ガイドラインでは、原状回復を次のように定義しています。
「入居者の故意・過失・善管注意義務違反、または通常の使用を超える使い方によって生じた損耗や毀損を、元の状態に戻すこと。」
つまり、壁紙DIYそのものは禁止されていませんが、元に戻せない貼り方をした場合、退去時に入居者負担になるというのが基本の考え方です。
一方で、日焼けや家具跡、電気ヤケなど、通常の生活で生じる汚れは原状回復の対象外。ここを正しく理解しておけば、「賃貸でも安全にDIYできる範囲」が見えてきます。
賃貸でNGになりやすい壁紙トラブルとは
賃貸で起こりやすい壁紙トラブルは、主に「はがす時の破損」と「跡が残る汚損」の2種類です。
まず、粘着が強い壁紙や両面テープを使うと、ビニールクロスが一緒にはがれてしまう場合があります。こうなると下地が露出し、部分補修では対応できず、壁一面の貼り替えが必要になることも。
また、のり跡・テープ跡が残ると、汚れや変色と判断される可能性があります。数ヶ月貼っただけで跡が残ってしまうケースもあるため、貼り方や選ぶ素材には注意が必要です。
賃貸DIYでは、仕上がりの美しさ以上に「元に戻せるかどうか」が大切な視点になります。
大家さん・管理会社が気にするポイント
退去時にチェックされるのは、主に次の3点です。
- 壁紙が元の状態に戻っているか
- 下地のボードに損傷がないか
- のり跡や変色などのDIYの痕跡が残っていないか
管理会社は「DIYをしたかどうか」ではなく、「原状回復できているか」を見ています。
そのため、賃貸で壁紙を貼る際は、下地に負担がかかりにくい施工方法を選ぶことが大切。特に築年数が経ってクロスが弱っている物件ほど、はがすときのダメージが出やすく注意が必要です。
原状回復できる!賃貸向け壁面DIYの5つの方法

ここからは、賃貸でも安心して取り入れられる実践的な方法を紹介します。「傷をつけない工夫」を取り入れれば、DIYの幅をぐっと広げられますよ。
【方法1】貼ってはがせるシールタイプの壁紙を使う
もっとも手軽で人気なのが、再剥離タイプのシール壁紙です。粘着が弱めに調整されており、はがすときに壁紙の表面を傷つけにくいのが特長です。
ただし、再剥離タイプでも製品ごとに粘着の強さが異なります。心配な場合は、目立たない位置で試し貼りをして一定期間放置し、はがしたときにクロスへ負担がないか確認しておくと安心です。
【方法2】はがせる「のり」で既存の壁紙の上から貼る
水性の弱粘着のりを使い、既存のクロスの上に壁紙を貼る方法です。のり跡が残りにくく、賃貸でも比較的取り入れやすい方法のひとつです。
ただ、量を付けすぎると乾燥後にムラや跡が残る可能性があります。薄め・少量を意識し、施工後はできるだけ長期間貼りっぱなしにせず、適度なタイミングで貼り替えるとトラブルを避けやすくなります。
【方法3】マスキングテープと両面テープで下地を保護する
壁紙を直接貼らず、まずマスキングテープで「保護層」を作り、その上から弱粘着の両面テープで壁紙を貼る方法です。のりが壁紙に直接触れないため、原状回復のリスクが低いといえます。
時間と手間はかかりますが、賃貸で一番安心できる方法でもあります。小さな面積、アクセント的な使い方をする場合におすすめです。
【方法4】突っ張り棒や有孔ボードを活用して壁を傷つけずに装飾する
「貼る」以外で部屋の雰囲気を変えたい方は、突っ張り棒や有孔ボード(ペグボード)を活用するのも一つの方法です。突っ張り棒や角材で枠を組み、その上に板や有孔ボードを固定すれば、壁に触れずにディスプレイ面をつくれます。
壁へ直接手を加えないため、原状回復の心配がありません。棚を作ったり、布やパネルを吊るしたりと、自由度の高いアレンジができます。
大きな模様替えには向きませんが、「少し雰囲気を変えたい」という場合には手軽で安全な選択肢です。
【方法5】扉・襖を一時的に取り換える
壁をいじらず部屋の印象を変えたい場合は、襖や室内引き戸を「建具ごと交換」する方法があります。既存の建具を保管しておき、退去時に元に戻せば原状回復の負担がほとんどありません。和室の雰囲気を大きく変えたいときにもおすすめです。
ただ、既製品ではサイズが合わないことも多く、「どこで頼めばいい?」「オーダー品は高そう」と悩む方もいるでしょう。そんな時は、ネット注文が可能で、無料で作り直しできる建具オーダーシステムを利用してみてはいかがでしょうか。
和室リフォーム本舗では、オーダーメイド建具で採寸ミスがあっても無償再製作できる「採寸ミスあんしん保証サービス」を提供しており、初めてでも安心して注文できます。
詳しい内容はこちら: 採寸ミスあんしん保証
退去時にトラブルにしないための原状回復の注意点

賃貸で壁紙DIYを楽しむうえで、もっとも避けたいのが「退去時の追加請求」。特に壁紙は面積が大きく、傷や跡が残るとそのまま原状回復の対象になりやすい場所でもあります。
ここでは、賃貸ならではの注意点を紹介します。
はがすときに破れやすい賃貸クロスの特徴
賃貸で一般的に使われているビニールクロスは、表面の紙層が薄く、経年劣化が進んでいることも多いもの。一見きれいに見えても、紫外線や湿気によって内部が弱っていることがあり、粘着の強い壁紙を貼ると、はがす際に表面がめくれてしまう場合があります。
特に、薄手・凹凸少な目・経年劣化しているクロスは破れやすいのが特徴です。貼る前に小さな範囲で試し貼りし、はがした際の負担を確認しておくと安全です。
のり残り・色移りを防ぐための対策
壁紙DIYでよくあるトラブルのひとつが、のりやテープ跡の「残留」。粘着のシール壁紙や両面テープは、長期間貼り続けると跡が落ちにくくなり、場合によっては壁一面の貼り替えが必要になることもあります。
また、濃い色の壁紙は色移りのリスクがあるため、賃貸では控えめな色を選ぶと安心です。
再剥離タイプの壁紙や水性の弱粘着のりを使い、長期間貼りっぱなしにしないことが基本です。
退去前に自分でできる補修の範囲と限界
軽いのり跡や汚れであれば、中性洗剤やアルコールできれいにできます。ただし、破れた場合の補修はごく小範囲に限られ、広い面積は自力での復元が難しいのが現実です。
大切なのは、無理に自分で直そうとして破損を広げないこと。気になる部分を見つけても焦らず、まずは汚れか破れか、下地まで損傷していないかを冷静に確認しましょう。
まとめ|賃貸でも「壁紙DIY」は楽しめる!
賃貸での壁紙DIYは、原状回復の考え方を理解し、壁を傷つけない方法を選べば十分に楽しめます。
ポイントは、貼った状態の美しさよりも、はがしたときに元に戻せるかどうか。これだけを意識するだけでトラブルを大きく避けられます。
まずは小さな面積から試したり、再剥離タイプの壁紙を選んだりと、リスクの少ない方法から始めてみてください。自宅を好みの雰囲気にできれば、おうち時間をもっと楽しめるようになるはずです。
和室リフォーム本舗では、
建具・襖・ドアの販売に加え、壁紙で仕上げるふすまやドアのオーダー製作にも対応しています。ご希望に応じて、ご自宅の壁紙と合わせた品番での手仕上げも可能です。DIYと組み合わせながら、「ここだけはプロに任せたい」という部分をサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。


